これは以前修復工房に来たイスで、私が修復したものです。一見、ゴシックスタイルの壊れた古いイスに見えます。
イスの一部が無くなってしまっていることがこの写真からわかると思います。欠損箇所を同じ木材(オーク)で作り色を合わせクリーニングとワックスがけで完成です。
このイスにはイスとしての機能以外に階段(梯子)という役割も付いています。後ろ足を持ち上げる(背もたれを前に倒す)と階段状の梯子になるのです。
これは英語ではMetamorphic Library Chairと呼ばれ、18世紀に考案され特許を取得したアイデアでしたが、19世紀になるまで普及することがありませんでした。主に屋敷にある図書室や書斎で使われました。
一つの家具で二つの役割を担うため現在でも人気が高く復刻版も作られています。このようなアンティークのものになると珍しく需要も高いので高価になります。