アンティークの素材によく登場するマザーオブパール(Mother of pearl)、日本語では真珠母(しんじゅぼ)と言い、貝の内側に形成される炭酸カルシウムが主成分の光沢のある物質です。層になっているため、角度によって見え方が異なり虹色に輝く美しい素材です。そのため、古くから宝石のように扱われたり、様々な装飾の一部として使われてきました。貝の種類は白蝶貝、黒蝶貝、アワビ、夜光貝、オウムガイなどなど多種にわたります。

古くからこの素材が利用されてきた理由は、独特の美しい輝き、硬い素材なので表面を磨きあげることで光沢が増すこと、防水性が高く水に強い、紫外線による劣化がほとんどないことなどが挙げられます。ただし、強い衝撃が加わると割れたりヒビが入る素材でもあります。

私も修復で使うことがあり、象牙よりもずっと硬くとても加工しにくい素材であることをよく知っているので、手のこんだ古いマザーオブパールを目にすると、職人の大変さと技術の高さに見入ってしまいます。

カトラリー、特にナイフ、フォーク、スプーンの柄に使われたり、皿に使われたり

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家具の装飾に使われたり

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小箱の化粧材や携帯用のナイフハンドル、クロスで使われたり

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裁縫道具で使われたり

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貝殻なので薄めの材料がほとんどで、厚みのあるものはあまり存在しません。カトラリーのハンドルになるような厚いマザーオブパールの多くは取り尽くされ現在では厚みのある天然のマザーオブパールの入手は難しくなっています。上の写真にある指ぬきは直径1.8センチあり加工前の材料は2センチはあったと思われ、厚みのある貴重な材料で作られたことがわかります。