これは私の数あるアンティークコレクションの中で最も珍しく貴重な一品です。

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シルバーフィリグリーの容器とお皿です。

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これを見つけたのはもう10年以上前になります。
当時はまだ修復士になるための大学に通っていた頃で、小さな村のアンティークフェアで偶然見つけました。
これがいつ作られたものなのか、どこで作られたものなのかなど、知識があったわけではありませんでしたが、一目見た瞬間に『これは珍しいものに違いない!!』と直感し、すぐに購入しました。

数年後、バーリーハウスに就職し、バーリーハウスのコレクションの中にこれに良く似たものがあるのを見つけました。そこで、バーリーハウスの学芸員にこれを見せると彼は『こんなものがアンティークフェアに出るなんて!』と非常に驚き、すぐに彼の知人でロシアのエルミタージュ美術館(Hermitage Museum)で働くフィリグリーのエキスパートに写真をメールすると、次のような返信が返ってきました。

『これは17世紀頃にインドネシアのゴアかバタヴィアの中華系の宝飾職人が作ったものだろう。
そこからオランダを経由してイギリスに入ってきたに違いない。
これは非常に質の良いシルバーで出来ていて、普通のスターリングシルバーの純度(約92.5%)よりもずっと純度が高い。普通だったら博物館や美術館にあるようなものだ。』

当時のインドネシアはオランダの統治下にあり、東インド会社の拠点でもあったため、インドネシアで作られたこの容器とお皿は、オランダに渡った後でシルバーの検査を受けたのだと思われます。
容器の縁に、非常に小さいですが、オランダのホールマークも確認できます。

手に入れたときにはわからなかった歴史や背景が、数年後に偶然わかるということはよくあり、これもまたアンティークの面白さのひとつです。
こうしてコレクションが増えると同時に知識も増えていくのです。