古いもの、特に古い木材を修復する時に使用する接着剤は必ず伝統的な膠(にかわ)を使います。イギリスではアニマルグルー(Animal Glue)またはスコッチグルー(Scotch Glue)と言われる膠が主流で、動物(主に牛)の骨や筋を煮詰めた液状のものを乾燥させ小さな粒状にして販売されています。

この粒状のアニマルグルーを水に浸け半日から丸一日置くと、ゼリー状の粒になります。その後、60度ほどで温めると溶けてドロドロになります。これで使える状態になります。

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この伝統的な膠はプロテインベースの接着剤で、温度が下がると再びゼリー状になり非常に扱いにくいというマイナス面がありますが、水分と温度を上げることで綺麗に取り除くことができるという利点があり非常に強力な接着力があります。そして古くは古代エジプトの時代から使用されてきたので100年後、数百年後、数千年後どのようになるのかわかっているので安心して使用できます。

プロの修復師は、現代の木工用ボンドやその他の現代の接着剤を使いません。それは一度塗ったら綺麗に接着剤を取り除くことができない、そして数年後、数十年後、数百年後、現代の接着剤がどのように変化するのか誰にもわからないからです。実際に修復をしていると、誰かが現代の接着剤を使用し修理していることがあります。大概、同じ部分が再び壊れます。それはその接着剤の強度が十分でないということの証明でもあります。そしてそれを修復する場合、現代の接着剤を剥がすのに時間がかかったり、より大掛かりな修復になり依頼人の支払う修復費用が上がってしまうことがあります。

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膠で接着後、固定し乾かしている家具