アンティーク家具の修復でほぼ毎日使う道具の一つに鑿(ノミ)があります。鑿とは刃物の道具で木材を加工したり彫刻するときに使う道具で古くから使われています。

私が仕事で主に使っているのは日本の古い鑿で曽祖父が使っていたもので、かなり前に祖父母の家に行った時に蔵で見つけ、綺麗にして使っています。

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日本の鑿とイギリスの鑿は形状と構造が異なっています。日本の鑿は二枚の鋼で作られ表には柔らかい鋼、裏には硬い鋼が使われていますが、イギリスの鑿は硬い鋼のみで全てが作られています。

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(左5本がイギリスの鑿 右6本が日本の鑿)

両方の鑿に利点欠点があります。

日本の鑿はイギリスの鑿に比べ厚みがあり、研ぐ時に設置面が広く砥石の上で安定し研ぎやすく、裏面には窪みがあります。この窪みがあることで硬い鋼でも摩擦面が少なく先を早く研ぐことができます。イギリスの鑿は薄いので砥石の接着面が狭く不安定で研ぐ面を平らにするのが難しく、また硬い鋼なので研ぐのに時間がかかります。しかし、イギリスの鑿は硬いので家具の中に釘やネジが入っている可能性が高い部分を削る際には歯が大きく欠ける心配が少ないですが、同じ状況で日本の鑿を使用した場合は歯へのダメージが大きいです。なので私は日本の鑿とイギリスの鑿を修復部位によって使い分けています。

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(左がイギリスの鑿 右2本が日本の鑿)

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(上が日本の鑿 下がイギリスの鑿)

日本の鑿の方が断然切れ味が良く、歯のもちも良いので主に日本の鑿を使っています。鑿だけではなく鉋(カンナ)、ノコギリ、木工道具ではありませんが包丁も、日本の刃物は素晴らしいという認識が、イギリス・ヨーロッパの特にプロの間では浸透しています。道具にこだわる人の多くは日本の刃物を使っている傾向が高いです。