現在のイギリスでは使われることは無くなってしまった、変わったフォークがあります。主に先が三つに分かれたデザインのフォークです(先が2つ、4つのものもあります)。一見とても似ていますが、実は異なる名前で用途も異なります。イギリス人でも区別がつく人は意外に少なく同じものと思っている人が多いです。私も長い間同じものだと勘違いしていました。

SSE084 (3)

bread fork

写真を見てわかると思いますがフォークの先の形状はとても似ていますが、ハンドルの長さが異なります。共に19世紀から20世紀初頭までよく使われたものです。

1枚目の写真のフォークはブレッドフォーク(Bread Fork)と呼ばれ、食卓に置かれたパンのカゴ(または皿)からパンを自分の皿に取るときに使われたフォークです。パンのカゴから手で取ることは食卓のマナー違反でした。これは中流、上流階級だけではなくそれほど豊かではない階級ですら素手てパンを取り分けることはマナー違反だったそうです。裕福な家では象牙、マザーオブパールなどのハンドルに純銀のフォークで作られたもの、それほど豊かではない家では安価な素材で作られたものが使われましたが、デザインは同じでした。食事の前に手を洗う習慣のないイギリスではブレッドフォークを使う習慣は衛生的で良い習慣だったと思いますが、今では使われなくなったようです。

2枚目の写真はトースティングフォーク(Toasting Fork)と呼ばれ、今のように便利なガスや電気があまり普及していない時代に暖炉などでパンをトーストするのに使われたものです。そのときに火から離れる必要があったためハンドルが長く、中にはハンドルが伸びる構造のものもあります。

似たようなフォークですが用途が全然違うことがわかります。