リビングで使う家具の中にローテーブルというものがあります。主にソファの前に置いてちょっとした飲み物や食べ物、雑誌、テレビのリモコンなどを置いたりする便利な低いテーブルです。イギリスではコーヒーテーブル(Coffee Table)と呼ばれています。

coffee table

ヨーロッパにコーヒーが普及し、17世紀のイギリスでは、ブルジョワや啓蒙主義者が集う場所として、国中にコーヒーハウスができました。開店したばかりのコーヒーハウスには、コーヒーカップと新聞や雑誌を置く場所がないという苦情が殺到し、コーヒーハウスのオーナーはこのために特注のコーヒーテーブルを作ったそうです。しかし、70センチほどの高さがありデザインも現在使われているものと違いました。低いテーブルが普及しなかったのは欧米の生活ではテーブルと椅子が普及していたので不要だったということだと思います。

日本では畳の生活でちゃぶ台などの低いテーブルが一般的でした。本当かどうかわかりませんが、ローテーブルはその影響を受けているという記事を以前読んだことがあります。

徐々に普及し始めたのは20世紀初頭で、1950年代になるとテレビが発明され、ソファーに座ってテレビを見るときに遮ることのないコーヒーテーブルが一気に普及しました。1960年代以降のデザインでは、木材以外に、ガラス、クロムメッキ、スチール、アクリルなどの素材で作られるようになりました。この頃にビクトリア朝のアンティーク風デザインのものが多く作られました。

私は20年近くアンティーク家具の修復をしていますが、100年以上経過した、ソファーの前に置いて使うコーヒーテーブル(ローテーブル)は一度も見たことがありません。アンティーク家具を扱う知識のあるディーラーや修復士はアンティークのコーヒーテーブル(ローテーブル)は存在しないという共通の認識を持っています。

例外的なものとして、何度かアンティークのテーブルの脚が切られて短くなったもの(コーヒーテーブルにされてしまったもの)を修復したことは何度かありますが。脚の切られたアンティークテーブルはフランスの19世紀に作られたダイニングテーブルが多いです。

アンティークのローテーブル(イギリスでもアンティークのコーヒーテーブル)として売られているものを目にします。これらの多くは1950年〜1970年くらいに作られたアンティーク風の復刻テーブルで実際はアンティーク(100年以上経過したもの)ではなくビンテージ、復刻家具(リプロダクション家具)になります。