アンティークシルバーのマニアの間では知られていますが、一般にはあまり目にすることのないスコティッシュ プロビンシャル シルバー(Scottish Provincial Silver)というものがあります。イギリスではこれらを集めるコレクターや専門に扱うディーラーが存在します。珍しいので通常のシルバーよりも高値で取引されています。シルバーのコレクターの中でもかなりマニアックな分野のコレクションになります。プロビンシャルとは「地方の」と言う意味で「スコットランドの地方で作られたシルバー」ということになります。

スコティッシュ プロビンシャル シルバーにはお馴染みのホールマークであるアッセイオフィス(92.5%以上の銀が含まれていることを検査し証明する機関)で押されるライオンのマーク、Dutyマーク、Date Letter(年号を判別するために押されたアルファベット)がありません。プロビンシャル シルバーと呼ばれるものはアッセイオフィスがあるエディンバラやグラスゴーには送られることなく、メーカーの刻印、町の刻印、町のシンボルの刻印などのみが押されました。

これは私の持っているスコティッシュ プロビンシャル シルバー(19世紀初頭に作られたもの)の写真です。見た目は普通のアンティークシルバーと変わりませんが、刻印を見ると違いがわかります。

Scottish Provincial Silver1 Scottish Provincial Silver2 Scottish Provincial Silver3

下の写真はほんの一部ですが、このようにイギリスのアッセイオフィスを経由してきたマークとはかなり異なります。

Scottish Provincial Silver4
『Jackson’s Hallmarks』 by Ian Pickford より

もっとレアなのはイギリスやアイルランドのプロビンシャル シルバーです。これらは16 、17世紀とかなり早い時期に作られたものなので数百万円、それ以上の値がつくものです。

Scottish Provincial Silver5
『Jackson’s Hallmarks』 by Ian Pickford より

スコットランドでは19世紀になっても作られ続けられたので時々、市場に出てきます。しかし、珍しいので知らない人も多く刻印を見てシルバープレート(銀メッキ)と判断されることも多々あります。イギリスのアンティークディーラーでも知らない人が結構いるので、思わぬところで見つかることがあります。