アンティークのカップを見ていると時々不思議なデザインのカップを目にすることがあります。飲み口にガードがついています。これはMoustache Cupと呼ばれるカップで、口髭がある人専用のカップです。
19世紀にイギリスなど欧米の男性の間で口髭を伸ばしセットすることが流行しました。様々なスタイルがあり、形状を整えるためにワックスを髭につけることが多かったそうです。そのようなファッションの流行の中で苦労も多かったようです。特にコーヒーや紅茶を飲む際に髭に飲み物が付いて色がついてしまったり、温かい飲み物からの蒸気でワックスが溶けて飲み物に入ってしまうことがありました。
そこでイギリス人のHarvey Adams氏によって1830年にこのMoustache Cupが発明され、欧米各地に一気に広がりました。有名なメーカー、マイセン、ロイヤルクラウンダービー、リモージュなどもMoustache Cupを作ったそうです。
1870年代になるMoustache Spoonが発明されました。
現在は19世紀の欧米のように口髭は流行していないので需要はかなり少ないと思割れますが、ユニークで珍しいものなので欧米にはコレクターがいます。もしかしたら現在でも立派な口髭を生やしている人には重宝するものなのかもしれません。