イギリスのアンティークの世界でよく耳にする言葉に「フェイク」(Fake)と「リプロダクション」(Reproduction)があります。

フェイクとは贋作のことで、本物のアンティークに偽て作られたもので、「相手を騙してやるという悪意」が含まれると私は常に感じています。フェイクが存在するアンティークは高額なものがほとんどです。限りなく本物に近づけるためにリサーチや製作段階で時間をかけて作っているので高額なものでないと割に合わないからです。イギリスで贋作師が質の高いフェイクを作り、本物と信じた美術館や博物館が購入し展示していたことも過去にありました。

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リプロダクションは直訳すると再生産ですが復刻版と言った方がニュアンスが近いと思います。昔流行したアンティークのデザインを再現して作られ手頃な価格で販売されるものです。フェイクに悪意を感じるのとは逆に、リプロダクションには作った職人やそのデザインへのリスペクトを感じます。相手を騙すという意図が無いのでメーカーの刻印などがあることが多く、復刻されるものも高価なものだけではなく安価なものまで幅広くあります。
アンティークに日々触れてアンティークに目が慣れていると、アンティークなのかリプロダクションなのかわかるようになります。リプロダクションは機械で作られたものが多く、機械で作られた時に残った跡や質感や色合い、デザインが微妙に異なる点、そして構造の相違などからわかります。

フェイクもリプロダクションもどちらも一見するとアンティークに見えますが、アンティークは100年以上経ったものを指すので両方ともアンティークではありません。

私の専門は家具の修復なのでこれまで数え切れないほどのアンティーク家具を見て触ってきました。その経験から、遠目に見るだけでも写真だけであっても、家具であれば本物のアンティークなのかリプロダクションなのかほぼわかります。とても残念なことでありますが、日本でアンティーク家具として売られていたり、アンティーク家具だと信じて購入して家に飾ってある家具のなかにも、本物のアンティークではなくリプロダクションであることが実は少なくありません。日本で販売した人が、リプロダクションだと知っているのに本物のアンティークだと嘘をついて売ったのか、イギリスに買い付けに来た時にイギリス人のディーラーに本物のアンティークだと騙されたのか、実際はどちらなのかわかりませんが、日本に溢れている(本物だと信じられている)リプロダクションの家具を見るたびに、本物を見る目を育てることが難しい土壌だなと感じずにはいられません。本物の本当の良さをもっともっと日本に伝えていきたいと強く思う瞬間でもあります。

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