多くのアンティークを目にしていると様々なものに遭遇します。現在では使われなくなり、何に使われていたのかわからないものも見かけます。

Skirt Lifter1

この道具は何に使われていたのか多くのイギリス人が知らないものの一つです。
本体は金属でできており、真ん中にある留め金を上にスライドすると、閉じていた下の部分が開きます。トングのような形状で、留め金を上げるとトングのように常に開いだ状態になります。何かを挟めるようになっている部分の内側を見ると小さな突起が多くあり、天然ゴムで作られていることがわかります。いったい何に使われていたのでしょうか?

Skirt Lifter2 Skirt Lifter3

これは19世紀後半に発明されたスカートリフター(Skirt Lifter)と呼ばれるものです。長いスカートを履いていた時代、スカートを持ち上げる場面は日常的に多くありました。汚れたり何かに引っかかってしまうのを防ぐために生まれたのがこの装身具で、ベルトにつけたシャトレーン(時計や裁縫道具などをつけるチェーンのついた装身具)やチェーンにつけて、スカートの先を挟んで少し釣り上げて使いました。挟む部分の内側に天然ゴムが使われているのは布を傷つけないようにしっかりと布をグリップするためのアイデアであったことが分かります。

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19世紀の道は現在のようにアスファルトの舗装は無く、土であったり、石畳でも水たまりが多く、馬の糞やゴミも多かったので、スカートを汚さないためにスカートリフターは普及しました。また自転車に乗る時にも長いスカートが引っかからないようにできるのでよく使われたそうです。

どんなに長くアンティークに接していても、常に、見たことがない変わった道具や美しいデザインのもの、知らない歴史に出くわします。知的好奇心を刺激してくれるアンティークの世界の大きな魅力の一つです。現在では無用の長物ですが、こういう変わったものをつい集めてしまいます。