イギリスのダービーシャー(Derbyshire)でのみ産出されるブルー・ジョン(Blue John)と呼ばれる青紫と黄色の美しい縞模様の入った蛍石(フローライト)の仲間があります。日本ではあまり知られていないと思いますが、ヨーロッパ、特にイギリス、フランスのアンティーク好きにはよく知られ人気が高く珍しいため、高額な値段で取引されています。呼び名の由来は、フランス語でBlue-yellowを意味するBleu-jauneからという説や、採掘者がこの石をBlack-jackと呼んでいてそれがブルー・ジョンになったなど諸説ありはっきりしていません。

Blue John1

18世紀の中頃から採掘が始まります。その美しさからイギリスで最も有名なマナーハウスであるチャッツワースやバッキンガム宮殿など裕福な大邸宅や宮殿などで需要が高まりました。主に装飾用の杯、壺、皿、小箱、ジュエリー、非常に稀ですが家具や室内の装飾などに利用されました。

Blue John2

この石の硬度は4程度と柔らかく加工がしやすいのですが細かいヒビが多い為、加工をするときに時間がかかる作業工程がありました。原石は1年以上自然乾燥させ、松脂に浸された後に再度乾燥させます。その状態にしてから旋盤機などで形状を作るための加工がされました。実際に私の仲の良い修復士がブルー・ジョンのオブジェを修復をしている作業を見せてもらい触らせてもらったことがありますが、柔らかく加工がしやすい素材でした。

残念なことに第一次世界大戦中に鉄溶解炉の燃料に利用された為に、質の良い大きなブルー・ジョンはほぼ掘り尽くされてしまいました。現在でも少量の採掘はされていて、加工品、主にジュエリーにされたものが販売されています。

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私が持っているブローチ(20世紀に作られたもの)