アンティーク家具の修復をしていると家具の鍵がなくなっていることが多々あります。鍵は本体よりも小さく毎回施錠するのが面倒になり別の場所にしまっておいて忘れてしまうケースなどが多いと思います。
時々、鍵を作ってくれという依頼があり、別の古い鍵を元に少し手を加えて作ったり、新しく作ったりします。そういうときのために古い鍵はたくさん持っているのですが、修復の仕事のためだけでなく、個人的に古い鍵は好きなこともありコレクションしています。

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その中に一つ珍しい鍵があります。

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この鍵の先は一方向にのみ曲がるヒンジ状になっており、真っ直ぐに伸ばした状態で鍵を回転させると先が折れ曲ります。

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通常の鍵穴は鍵の形状からこの様な形になっています。

しかし、上述した折れ曲がる鍵の鍵穴は丸い形状だったと思われます。先を伸ばした状態の鍵を差し込み、回転させると重力で鍵の先が曲がり、開閉できる構造になっています。

似た様な形状の鍵で、この鍵のように鍵自体が折れ曲がったりするものもありますが、それはステムの真ん中(鍵の真ん中辺り)が折れ曲がる構造になっている大きな鍵です。その鍵は屋敷の大きな扉やゲートなどに使われたもので、鍵が大きいのでそのままではポケットに入れられないため小さくするために工夫されたものだと言われています。

私の持っている先がヒンジ状になっている鍵は約90度までしか曲がらないことから、ポケットに収納するための機能ではないことがわかります。

仕事柄、20年以上古い西洋家具を沢山見てきましたがこの様な鍵を使用する丸い鍵穴は一度も目にしたことがありません。また仕事で大きな屋敷や城に行く機会もありますが、そこでも目にしたことがないことからかなり珍しいものだと思います。

鍵の大きさから大きな金庫などの貴重品を入れる家具か、もしくはドアの鍵だと思います。アンティークの世界では何の用途に使われたかわからないものに時々遭遇します。その様な珍しいアイテムを持っていると常に頭の中に残り、後に関係するものを目にした時にそれがリンクし、パズルの様に謎が解けることがあります。この鍵もいつか謎が解けるかもしれません。