時々、修復工房に運ばれてくるものの中に柱時計があります。
イギリスではLongcase Clockと呼ばれています(Grandfather Clockと呼ばれることもありますがLongcase Clockの方がイギリスでは一般的です)。
今日は日本ではあまり馴染みがないと思われる柱時計の修復の紹介をしたいと思います。
アンティーク家具の修復工房では主に柱時計の外側の木でできたケースを修復します。内側の時計の機械部分は専門に修復修理をする職人がイギリスにはいます。最近工房に運ばれてきた19世紀の大きな柱時計は、モールディングという木の装飾部が二箇所と脚のほとんどが欠損、その他に表面の象眼細工の剥離などもあり、あまり良い状態ではありませんでした。
横の大きなモールディング(赤丸部分)が欠損しています。反対も同様に欠損しています。
欠損部分は使われているのと同じオーク材を使用します。
脚は、少し残っていた部分のデザインをもとにオリジナルのデザインに再現します。
古い色合いに色を合わせ磨き上げます。
この修復内容はアンティークの柱時計でよくある作業です。
もう一つ別の柱時計も紹介します。
これは少し前に工房に運ばれてきた18世紀の柱時計で、細かい装飾が欠損していました。
薄い木の板がピアスド(切り抜き)され裏にはシルクが張られていましたが無くなっています。
横の装飾は三分の一が欠損しています。反対側はほとんど何も残っていませんでした。
残っている部分をもとに欠損部をデザインしました。ない部分は完全に私の想像(おそらくこうであったであろうと想像しながら作りました)でデザインした模様です。
正面の装飾は右側部分がほとんど残っていたのでそのまま再現しました。
このように今までの経験と知識をもとに可能な限りオリジナルのデザインにして欠損部分を修復していきます。