先日、パリのノートルダム大聖堂の火災が世界中でトップニュースとして報道されました。古いものの修復に長年携わっている私にとってもショッキングなニュースでした。

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フランス大統領マクロン氏は火災中現地に行き「修復をする。募金を募ります。」とメディアを使って発表していました。恐らく、あまりにもショッキングなニュースであるためパリ市民やカトリック教徒たちの動揺を抑えるつもりだったのではないかと思います。

翌日、BBCのニュースで大統領が「より美しいものにする」と言っているのを聞き耳を疑いました。新たなデザインを世界中から募集するとのことで、これは当初彼が宣言していたことと話が違っています。「修復」とは事故が起こる前のデザインに戻すことを意味し、新たにデザインを募集し作り直すのは修復ではないのです。

ノートルダム大聖堂は観光地でもありますが、カトリック教徒たちにとっては重要な場所でミサなどで実際に使われています。なので修復や修繕は必要な作業です。修復のためとして集められた募金のなかには世界中の多くのカトリック教徒たちからの募金もあると思われますが、カトリック教徒でない人からの募金も多くあると思います。

修復すると明言して集められた募金ですから、その募金で今までのデザインのものを復元する場合は誰からも文句はでないでしょうが、新しいデザインになった場合は賛否両論になることは確実です。

募金を募らず自分たちでの力で修繕し新しいデザインの塔を建てるのならまだ異論は少ないでしょうが、募金を使うのであれば焼失前の状態にしたいと思って募金した人は裏切られた気持ちになるはずです。

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火災の前のノートルダム大聖堂のデザインを見ると少し違和感があります。消失した塔は19世紀に付け加えられたものだからです。同じデザインの塔を修復しない(できない)のであれば、塔のない状態で純粋な古いゴシック建築の状態に戻すだけの修復でも良いと私は思います。

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