この写真のペアのサイドテーブルは、私の知り合いの家のガレージに5年ほど置いてあった家具です。もとはその人のお母さんの家にあったもので、白いペンキが塗られていてあまり綺麗ではないので放置されていました。

黒檀のテーブル1 黒檀のテーブル2

この家具を初めて見た時、19世紀末から20世紀初頭に流行したアーツアンドクラフトのデザインで、現在も人気のある素敵なデザインだったので処分しない方が良いと話していました。このように後になってペンキなどが塗られたものは、家具の表面にダメージがありそれを隠すために塗られた、もしくはオリジナルの色に飽きて好きな色に塗り替えられたという理由が結構あります。

今回、修復の依頼を受けたときに、おそらく白いペイントの下にオリジナルのペイントが残っているだろうと思い少し剥がしてみました。何層か白いペイントが厚く塗られていて、オリジナルのペイントだと思われるものがなかなか出てこなかったのですが、一番下の木のところまで削ると、黒い木材が出てきました。この家具は黒檀(エボニー)で作られていた事がわかりました。

黒檀のテーブル3

成長が遅く非常に硬い木材である黒檀は高価であったため家具の表面に装飾で使われる事が多く、全てが黒檀で作られている家具はあまり目にすることが無く、しかもペアで出てくることは滅多にありません。

黒檀のテーブル4

表面を傷つけないよう少しずつ剥がしたためかなり時間がかかりましたが、綺麗に剥離しクリーニングをした後軽く塗装して修復が完了しました。

黒檀のテーブル5

剥離した家具の表面に目立ったダメージが無かったので、ダメージを隠す為ではなく黒い色に飽きて白く塗られたと思われます。

本来は脚の装飾の部分(溝になっているところ)もすべて白いペイントを剥がすのですが、黒檀はその名の通り色が濃いため、元の色合いだと装飾がわかりづらくなるので、敢えて完全には剥がしませんでした。この白いペイントもまた、この家具の歴史の一つでもあるので、その名残を残すというのも良いのかなと考えました。

知り合いのこの家具の持ち主は質が良い珍しい家具であった事がわかりとても喜んでくれました。