今回は以前ブログで書いた「脚が切られた家具」の続編になります。

これはChest of drawers(箪笥)の天板の写真です。手前と奥の家具の表面には綺麗なマーケトリーと呼ばれる象嵌細工装飾が施されています。

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実は手前の天板は私が作った装飾で、奥のオリジナルの天板を元に作りました。

オリジナルの天板がこれです。

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もう一つの天板はマホガニーの装飾が施されたものでした。

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この2対の家具は18世紀にある屋敷の為に同じ工房で作られ、天板も最初は同じものでした。恐らく19世紀になって象嵌細工が施されているベースの板が木の収縮によって割れ大きな亀裂が入ったことで作り直されたと思われます。19世紀に流行し人気があったマホガニー材を使ったデザインになっています。亀裂の修理はその時されたようですが、しっかりと修理されたなかったので再び割れてしまっています。

オリジナルと同じ化粧材を手に入れカットしてマーケトリーのデザインを作り、ある程度完成したところで、19世紀に作られたマホガニーの装飾を剥がしていきます。

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内側の板の割れを修復します。

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カットしたマーケトリーの化粧材をニカワ(膠)で接着します。

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色をオリジナルと同じ色に合わせ、オリジナルのように傷をつけ、塗装を施し終了です。

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今まで相当な数のアンティーク家具を修復してきましたが、この修復が一番難しいプロジェクトでした。たくさんのパーツがある象嵌細工を一度に平ではない板に接着する作業はかなり苦労しました。そして象嵌細工の木目は見る方向によって色の濃さや見え方が変わってくるのでそれらを予想してサンプルを作りながら作業したためかなり時間がかかりました。ここまで大きな部分を隣にあるオリジナルと同じように作るのは非常に難しい作業なのです。