今回は、最近、修復した箱の質がとても良く美しかったのでその箱について書きたいと思います。
箱の裏に少し残っていた古い紙のラベルで、この箱がフランスのパリにある高級品を扱う店で販売されたことがわかりました。

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修復前は箱上のピアスド(切り抜き)された繊細な彫刻が欠損していて、この部分を修復することが目的で工房に持ち込まれました。欠損していた彫刻は新しい木を接着した後に彫りあげました。白い場所が新しい木を入れて彫った部分です。

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この他に、箱を横から見た場合、全体のデザインに違和感を覚えました。上部の装飾が多いのに下部がシンプルすぎて、デザインのバランスが悪いと思いました。箱の裏を見たところかなり昔に装飾が剥がれた跡が見られたので、この下部にあったであろう装飾と脚をデザインして作りました。

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新しく作った部分の色を合わせしポリッシングして完成です。蓋の上の欠損していた繊細な彫刻が戻ったことだけでなく、下部の欠損箇所が付け加えられたことで全体のバランスがとても良くなりました。欠損箇所はかなり昔に無くなっているので私の想像ですが、恐らくオリジナルはこのようなデザインであったのではないかと思います。長いあいだ家具や小物アンティークをたくさん見て触れているとデザインにはルールがあることに気がつきます。その感覚で欠損箇所はこうであっただろうと想像できるようになりました。