アンティークのコンディションには色々な状態があります。100年以上の長い年月を経てきたためです。装飾が破損しているもの、乾燥によって割れたもの、過去に壊れ修理されたもの、表面の傷、使われることで角が取れたものなどなど。

程よい表面の色合いの変化、細かい傷などはアンティークには不可欠で、それらは持ち主の歴史であり、その物に個性を与える役割をしています。長い間家にあった古い家具などは、使われる中でついた傷や小さな凹みは歴史でもあります。そのような傷などを完全に取り除いてしまうと、本物のアンティークの味わいを無くしてしまうのでイギリスでは過度の修復は嫌がられます。

最近、修復工房に運ばれてきた家具は水などの液体のマークが染み付いているものでした。このようなダメージはアンティークの味にはならず、色合いが大きく異なり目につくのでマイナス要因になります。

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左の写真:19世紀に作られたマホガニーテーブル 水などの液体によるダメージ
右の写真:19世紀にスコットランドで作られたカバノキで作られた箪笥。薬品か何かによってできた液体によるマーク(赤丸の部分)

表面の古い塗装を剥離し、薬品を使い水が染み込んでできたマークを取り除きます。この時も水のマークだけを取り除き、それ以外の傷やマークは残します。ヨーロッパ大陸でよく行われる表面を削ってこのようなマークを消すような修復はイギリスではおこないません。

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(修復後のテーブルと箪笥)

イギリス人の家に招かれ食事やお茶をいただくときは、テーブルに直接カップを置くことはしません。ほとんどのイギリス人はカップの下にコースターなどを置くのが習慣になっており、誰もがほぼ無意識のように注意している光景が最初は不思議に思えたくらいでした。

カップや食器を直接アンティーク家具の表面に置かないということが習慣になっている生活を目にすると、アンティークと共に生きる生活がここにはあるのだなと実感します。