長い間、アンティーク家具を見ていると珍しい家具が目に留まります。先日、手に入れた珍しい椅子について紹介したいと思います。

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座面部分が小さくスッと高く伸びた変わった椅子。通常のダイニングチェアと比べるとデザインが変わっていることが良くわかります。スッとした椅子は背もたれの高さが98.3cm、座面の高さが54.5cm、ダイニングチェアの背もたれの高さは85.7cm、座面の高さが45.5cmです。背もたれの差は12.6cm、座面の高さの差は9cmもあります。

(同じ場所から撮影)
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これはDeportment ChairもしくはCorrection Chairと呼ばれる椅子で、Deportmentは「態度」「行儀」「振る舞い」、Correctionは「矯正」という意味から、この椅子が何のために作られたものなのか想像できると思います。

外科医、解剖学者であるSir Astley Paston Cooper(1768-1841年)によって発明された姿勢を矯正するための子供用の椅子です。昔は背中を真っ直ぐにし頭を高くする姿勢が気品があるとされていました。子供の規律や躾という意味以外にも医学的にも良いとされていたそうです。

19世紀の教室や保育所では子供が言うことを聞かない時に罰として座らされました。この椅子に座らされ、もじもじ動いたり猫背になったりすると椅子から落ちてしまうので、子供は背筋を伸ばし頭を高く持ち上げ静かになることから利用されていました。

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(座面部分にオリジナルのケインがそのまま残っています)

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(座面のすぐ下のストレッチャーは子供が足をかけていたのですり減っています)

ダイニングチェアのように生活に必要な椅子ではなく、作られた数が少ないのであまり目にすることのない珍しいそしてプロポーションの美しい椅子です。