この写真の家具はバッキンガム宮殿所蔵の19世紀のフランス家具で、以前私が修復したものです。
ドアはBoulle Marquetryという象嵌(ぞうがん)細工が施されているもので、ドアの表面の赤い部分が鼈甲(べっこう)、金色の部分には真鍮(しんちゅう)が埋め込まれ、それ以外の黒い部分は黒檀(エボニー)で装飾されています。
こちらの写真が修復前のものです。真鍮の装飾が剥離し無くなってしまっている箇所も多くあります。
これを修復するには、失われずに残っている模様のパターンを参考にし、失われた箇所の真鍮を、真鍮の板から手作業で切り出して一から作り直す必要があります。
写真を見ていただくと分かると思いますが、模様は基本的には左右対称・上下対称のことが多く、またデザインには法則があるので、大抵は残っているところから失われた箇所のデザインはわかります。
この鼈甲と真鍮で模様のされた家具はイギリスのマナーハウスでもよく見かける家具で、ここバーリーハウスにもいくつかあります。
1枚の真鍮の板からこの模様を切り出すため、切り抜いて取り出したものと、切り抜いて残ったものの1対ができるため、同じ模様で真鍮部分と鼈甲部分が逆になっている家具が必ず2点出来るのです。この2点をペアで購入する貴族もいれば1点のみ購入した貴族もいました。
ヨーロッパの旅行の際にこの家具を目にされたときには、対となっているもう一つがセットとして置かれているかどうか、確認されてみてはいかがでしょうか。
はじめまして。突然のコメント失礼します。
ヨーロッパのお城などが好きで、このような豪華な家具を見るととてもワクワクします。
昔の貴族の生活の様子などを思わず想像するのですが、これは当時、どんなものを入れるために使われていたんでしょうか?
はじめまして、yukoさん。コメント有難うございます。
このような装飾が多い家具は見せるためのもので、何か特定の物を入れるために作られたわけではありません。このような家具を部屋に置いておくと、こんなに装飾が素晴らしいものを持てるほど余裕があるということ誇示できます。つまり、お客さんが来た時、富を見せつけることができるわけです。