これは現在では見かけることのなくなった、昔の財布(パース)です。
18世紀半ばから20世紀初頭にかけて、イギリスやフランスで流行したマイザーパース(長財布、ストッキングパース、リングパースなどとも呼ばれる)。
マイザーパースは、細長い筒状の形をしています。両端が広く、真ん中が狭いものもあります。 真ん中の部分には短いスリットが入っています。スライダーと呼ばれる2つの金属製のリングに財布を通し使います。両方のリングを片側にスライドさせ、コインを開口部から筒のもう一方の端に挿入し、片方のリングを端に密着させてコインを中に固定します。このようにして、両端にコインを入れていきます。リングがあることで、コインが中央のスリットから逃げないようになっているのです。
この財布のデザインは、中世にストッキングのつま先に小銭を入れる習慣から生まれました。16世紀の男性の間では、同じような筒型の財布の両端をリングで留めたものが流行していたようです。
マイザー(Miser)とは「お金を使いたがらない人」のことで、マイザーパースと呼ばれるようになったきっかけは、はっきりしていませんが、一説には、コインが一枚、あるいは数枚しか出ないように作られていたため、あるいはコインが確実に出て紛失しにくい構造になっていたため、そう呼ばれるようになったと言われています。
マイザーパースは男性も女性も持っていました。18世紀には、男性が袖の中に隠して持っていたこともあり、これがマイザーパースの名前の由来となっているという説もあります。また、女性はポケットに入れたり、ベルトの上に折り畳んで着用されることもありました。
マイザーパースが長く愛された理由のひとつは、裁縫が女性の嗜みの一つであったので、若い女性が財布を作り、紳士にプレゼントすることが流行したからです。