このような装飾の綺麗な箱を最近修復しました。19世紀初期に作られたライティイングボックス(Writting Box)と呼ばれる箱です。

Writting Box1

ライティングボックスとは持ち運びできるポータブルの小さなデスクのようなもので、中を開けるとスロープ状に平な面が広がることからライティングスロープとも呼ばれています。この広がった面には革や布が貼られており、文字を書くのに使われました。その他にはインク壺やペンなど文具を入れるスペースがあります。今で言うノート型パソコンのようなものでした。

Writting Box2

スロープの板の下にもスペースがあり、主に手紙や書類などが入れられました。このようなライティングボックスには時々隠しスペースがあります。表面の装飾の綺麗な丁寧に作られた質の高いものによく見られます。内側のパネルの端を少し持ち上げるとパネルが外れ小なさ隠れ引き出しが2つ出てきます。持ち主も知らないことが多く、今回の修復依頼者も知らず、教えてあげると驚いていました。

Writting Box3 Writting Box4

修復のメインは表面に埋め込まれている装飾が剥離しはじめ、汚れなどで装飾が見えにくくなってしまっているのを綺麗にする作業でした。ローズウッドの表面に埋め込まれた装飾は白蝶貝(マザーオブパール)、アワビ、3種類の色の異なる真鍮です。浮いた装飾をニカワで接着し直し、表面の古い塗装を剥がし同じ伝統的な塗装を塗り直すと表面の装飾が綺麗に見えるようになりました。以前は詳細が見れませんでしたが、これで細かい部分も見えるようになりました。父親から譲り受けたというこの箱、これからも持ち主の家で大切に受け継がれていくのだと思います。

Writting Box5