この写真の家具は部屋の角に置くコーナーキャビネットという家具で、以前私が修復したものです。

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18世紀の高さ2mを超えるような大きな家具です。
手前側の素材はマホガニー、内側の素材はパインで作られています。

これは修復前の後ろ側を撮った写真です。

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このドーム状の部分を部屋の角に配置します。
修復のために持ってきたときは、全体的にグラグラしていたり一部欠けている部分があったりして、もともとはその修復をしてほしいとの依頼でした。

構造上の欠けている箇所などを修復し、ぐらつきを直した後、扉を開けた上部(写真の緑色の部分)にうっすらと模様が隠れていることに気付きました。

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少しずつ注意深く表面の色を剥がしていくと、オリジナルの模様が現れてきました。

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おそらく、過去に誰かが上から色を塗ってしまったのでしょう。
上に塗られていた緑の色をすべて剥がし、もとのオリジナルの模様を再現したものがこちらの写真になります。

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持ち主のもとに返したとき、思いがけずオリジナルの姿に戻った家具を見て、驚き非常に喜んでくれました。

アンティーク家具は長く使われてきた時間の中で、このように手を加えられてオリジナルの姿を保っていないものも数多くあります。
今回のこの家具は上から色を塗られただけでしたが、時には家具の足を短くして高さを低くしていたりすることもあります。
余計な装飾を後から加えられているものもあります。
ですがやはり、職人が作ったオリジナルの状態が一番美しく、後から手を加えたものはその美しさを超えることはできないと私は思います。
修復で元の姿に戻すことができたときは、家具をひとつ救えたような気分になり私自身もとても嬉しい瞬間です。