アンティーク家具の修復をしていると、時々表面に色が塗られた古い家具や、家具の内側に色付きの紙が貼られたものなどがあります。これらの古い顔料には人体に危険な色があるので気をつけるようにしています。特に18世紀後期から19世紀に人気があり広く使われた色に緑があります。

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18世紀後期にスウェーデンの科学者カール・ヴィルヘルム・シェーレによって作られ、19世紀に大量に作られ普及したのがシェーレグリーン(Scheel’s Green)とパリスグリーン(Paris Green)です。それまで主に使われていた植物から作られた緑の色よりも美しい緑であったため普及しました。この顔料にはヒ素が多く含まれているのでヒ素中毒、心臓病、発ガン性の危険がありますが、このことは長い間知られることなく使われました。

Scheel’s Green & Paris Green

この緑は布の染料、壁紙、ケーキの装飾、子供のおもちゃ、飴、洋服、本などなど、ありとあらゆるのものに使われました。植物への興味が高く流行した19世紀のイギリスでは緑の壁紙が多く使われ、病気になったり亡くなったりする人が増えたそうです。また緑のドレスを着た女性が体調不良になり倒れることも多かったようです。緑が好きだったナポレオンが壁紙からのヒ素でヒ素中毒、ガンで亡くなったと言われています。

古いものには美しいものが多いですが、使われている顔料には毒性があるものがあるので気をつけた方が良いと思います。