白い陶器に黒い文字や絵が描かれたこのジャグ。キッチンもののアンティークを集めている人にはたまらない珍しいものです。
ジャグの表面を見るとサミュエル・クラーク(Samuel Clarke)のフードウォーマー(Food Warmers)と記載されています。
フードウォーマーとは18世紀のイギリスで生まれヨーロッパ各地に広まった食べ物を温める器具の総称です。
上のサミュエル・クラークのフードウォーマーの写真にはスタンドがないのですが、本来はナショナルトラストやメトロポリタン博物館所蔵のもののようにスタンドがあります。その構造は、空洞になっているスタンドの上部に水を入れた容器を設置できるようになっていて、その下にロウソクやオイルランプを置き容器の水を温める仕組みになっています。そしてその温められた水の中にこのポットが入ります。
病気の子供や病人が寝ているベッドサイドなどに置かれ、ポットの中に入れた液体や半液体の食べものを温めるのに使われました。本体に置かれたロウソクやオイルランプの火がベッドサイドの灯りとしての役割も果たし、便利なものでした。フードウォーマーに使われた素材は主に陶器、磁器、ブリキなどでした。
サミュエル・クラーク(Samuel Clarke)のフードウォーマーは19世紀後期から1920年頃まで作られており、それまでの伝統的なフードウォーマーのデザインを引き継ぎながらも便利になるような改良が新しく加えられました。全体の重さを軽くするために陶器とブリキを融合して作られたり、ランプとしてのみ使えるようにガラスのカバーを付けていたり、注ぎ口をこぼれにくくなるよう改良されたりしています。本体のスタンドは時代ことにサイズや形状が異なり、ジャグは5種類のサイズが存在します。